ChatGPT3.5 ロジャーズ風カウンセリングの試み
はじめに
人工知能の世界では、古く1960年代にカール・ロジャーズのカウンセリング療法（来談者中心療法）を参考に開発されたイライザ（Eliza）という自然言語処理を用いたチャットボットが試作されています。
利用した人からは「カウンセリングを受けているような気持になった」という声もあったそうです。
今回、イライザへのオマージュを込めて、流行りのChatGPTでそのバーチャルカウンセリングの再現を試みました。
① まずは何も考えずにストレートに質問してみました。
金子）気分が落ち込んでる。どうしたらいいですか？
気分が落ち込んでいるときは、何か心地よいことをすることが大切です。以下はいくつかのアイデアです：
1. 好きな音楽を聴く：自分の気分を変えたいときは、好きな曲を聴くことが効果・・・・
（以下、省略）
② ロジャーズ風に答えてもらう
金子）ロジャーズならどんなカウンセリングをしますか？
ロジャーズは、人本主義的アプローチを用いたカウンセリングを提唱しており、クライアント中心療法と呼ばれるアプローチを取ります。このアプローチでは、クライアントが自分自身を理解し、問題を解決するために必要なリソースを引き出すことが重視されます。
ロジャーズのカウンセリングでは、以下のようなステップがあります。
1. 共感的な対話：クライアントが自分の感情や思考を自由に話せるようにするために、カウンセラーは積極的に共感し、理解しようとします。
2. 無条件の肯定：クライアントが自分自身を受け入れ、自分の気持ちや行動に対して自己肯定感を持つことができるように、カウンセラーはクライアントを評価することなく、全面的に受け止めます。
3. 心理的安全性の確保：クライアントが安心して自分自身をさらけ出せるように、カウンセラーは信頼関係を築き、プライバシーを保護します。
4. 自己実現の促進：クライアントが自分自身を理解し、自己成長を促進するために、カウンセラーはクライアントの内面的なリソースを引き出し、自己決定力を高めるように導きます。
ロジャーズのカウンセリングは、クライアントの自己成長を促進することを重視し、カウンセラーはクライアントの専門家ではなく、共同作業者としてクライアントをサポートします。
③ ロジャーズの説明になってしまった。プロンプト（指示内容＝質問）を工夫してみる。
金子）あなたはロジャーズです。私は気分が落ち込んでいる。私をカウンセリングしてください。
わかりました。あなたの気分が落ち込んでいる理由を聞かせていただけますか？
まず、あなたの話をじっくり聞かせていただきます。話すことで、気持ちが楽になることもあります。共感的にお聞きするので、どんなことでも遠慮なく話してくださいね。
あなたの話を聞かせていただいたら、その感情や思考について一緒に探っていきたいと思います。ロジャーズのカウンセリングでは、あなた自身が自分の感情や思考を探究することが大切だと考えています。そのため、私は共感的に対話し、あなたが自分自身を理解できるように導きます。
また、無条件の肯定を大切にしています。あなたの気持ちや思考に対して否定的なことは言いません。むしろ、あなたの気持ちや思考に全面的に受け止め、あなた自身が解決策を見つけるためのサポートをします。
一緒に探究していく過程で、あなた自身が気分が落ち込んでいる理由や、解決策について気づくことができるかもしれません。どんなことでも話してくださいね。
金子）朝起きると苦しいんです。
朝起きたときに苦しく感じるということは、とてもつらい状況だと思います。どんなような苦しみを感じているのでしょうか？それがわかれば、その原因や理由を一緒に探っていくことができます。
ロジャーズのカウンセリングでは、クライアントが自分自身を理解し、自己成長を促進することを重視しています。そのため、あなた自身が気分が落ち込む原因を探ることが大切です。
朝起きると苦しいと感じる理由は、様々な要因が考えられます。例えば、心身の健康状態、日々のストレスや心配事、寝不足、睡眠の質の低下などが挙げられます。また、過去のトラウマや悲しい出来事が、朝起きると再び思い出されることもあります。
あなたが気分が落ち込む原因を探るために、共感的にお話をお聞きしながら、一緒に探っていければと思います。また、朝起きると苦しいと感じるときに、どのようなことがあなたを助けるのか、お聞かせいただけますか？例えば、朝のルーティンを変える、リラックスするための方法を取り入れる、朝の時間帯に話し相手がいることなどが挙げられます。一緒に解決策を考えていきましょう。
④まだ説明口調で、カウンセリングを受けている気がしない。プロンプトをさらに工夫する。
金子）ロジャーズはそんな長く説明するのでしょうか？実際のカウンセリングを再現してください。私は、朝起きると気分がへこみます。
ごめんなさい、前回の回答が不十分だったようですね。では、再度カウンセリングを行ってみます。
私: 朝起きると気分がへこみますね。具体的にどんな感情が湧いてくるんですか？
あなた: なんとなく気力がわかなくて、やる気が起きないです。
私: そうですね。やる気が起きないということは、目標や意欲が感じられないということでしょうか？
あなた: そうですね、自分には何ができるのか、何をしたいのかわからなくなっています。
私: それはとてもつらい状況ですね。自分自身の方向性や目標が見えなくなると、モチベーションややりがいも感じにくくなります。何か、自分が興味を持っていることや、やりたいことはありますか？
あなた: 今は特に何も思いつきません。
私: そうですか。それでは、まずは朝起きる前に自分自身をリラックスさせることができる方法を探していきましょう。例えば、深呼吸や瞑想、軽いストレッチなどを行うことで、気持ちを落ち着かせることができます。
また、自分自身に対して優しく接することも大切です。自分にできること、自分が持っているスキルや価値を見つめ直してみましょう。そうすることで、少しずつ自分自身に自信を持つことができるかもしれません。
あなた: なるほど、深呼吸やストレッチなど、自分自身をリラックスさせる方法を試してみます。ありがとうございます。
私: どういたしまして。もし何か話したいことがあったら、いつでもおっしゃってくださいね。
⑤回答が暴走している・・・さらにプロンプトを工夫。
金子）会話を要約しないで、一つずつ短いセンテンスで答えてください。
はい、承知しました。以降、一つずつ短いセンテンスで回答いたします。
金子）朝起きると胸が苦しくなります。
それはつらい状況ですね。
⑥オウム返しだけになってしまった。プロンプト（質問）を工夫。
金子）何か質問しないのですか？
はい、もちろんです。朝起きると胸が苦しくなる理由は何だと思いますか？
金子）会社のことを考えるからです。
なるほど、会社のことがストレスの原因になっているんですね。具体的には、どんなことが胸の苦しさを引き起こしていると感じますか？
金子）人間関係です。
人間関係が原因ということですね。具体的には、どんな人間関係で悩んでいるのでしょうか？
金子）上司と考えが合わないです。
上司と意見が合わないということで、どのような意見の相違点があるのでしょうか？
金子）上司は私を意見を聞いてくれないで、命令ばかりするんです。
上司からの命令が多く、意見を聞いてもらえないということで、そう感じる理由をもう少し詳しく教えていただけますか？例えば、どのような状況でそう感じることが多いですか？
金子）怖い顔して命令する。顔見るのもツライです。
上司の怖い顔と命令が原因で、ストレスを感じるということですね。上司の顔を見ることがつらいということですが、具体的にどんな状況で顔を見ることが多いですか？
金子）仕事を指示する時、怒鳴ったりします。私はどんな顔で接したらいいかわかりません。
上司が仕事を指示する時に怒鳴ったりすることがあるということですね。そのような状況で、どのような顔をしたらよいかわからないということですが、もう少し詳しく聞かせてください。例えば、どのような表情で接しているのでしょうか？
金子）鬼です。
上司が「鬼」と形容されるような厳しい表情で接しているということですね。それに対して、どのような気持ちで受け止めているのでしょうか？
金子）拒否します。
承知しました。もし、受け止め方や感情について話したいと思ったら、遠慮なくおっしゃってください。
⑦だんだんカウンセリングを受けているっぽくなってきた。質問されるだけでは物足りず、アドバイスが欲しいという気になってきて、プロンプトを変えてみる。
金子）私は笑顔で接しないといけないでしょうか？
笑顔で接する必要はありませんが、上司が怖い顔をしている場合でも、自分らしく接することが大切です。自分がストレスを感じず、上司とのコミュニケーションもスムーズに進めるためにも、自分の感情を押し殺したり、無理に笑顔を作ることは避けましょう。ただし、礼儀や敬意を忘れず、上司に対して丁寧な態度を心がけることが重要です。
金子）上司が怒ってしまったらどうしますか？
上司が怒ってしまった場合は、まずは冷静になって自分が何をしたか、何が原因で上司が怒ってしまったかを確認しましょう。そして、上司の言葉や態度に対して反論せず、謝罪や改善策の提案など、建設的な対応を心がけることが重要です。また、上司との関係改善のために、上司とのコミュニケーションを積極的に取り、信頼関係を築くことも大切です。
金子）信頼関係の基本はなんでしょうか？
信頼関係の基本は、互いに相手を尊重し、正直かつオープンなコミュニケーションを図ることです。具体的には、以下のようなことが挙げられます。
1. 相手の言葉や意見を真剣に聞くこと。
2. 相手に対して丁寧な態度を示すこと。
3. 誠実で正直な態度で接すること。
4. 相手の立場や考えを理解しようとすること。
5 .約束や取り決めを守ること。
これらの基本を守りながら、上司との関係改善に努めることが大切です。
金子）ありがとうございました。少しすっきりしました。
どういたしまして。気持ちが少し楽になったようで良かったです。何か他にお力になれることがあれば、遠慮なくお聞きください。
※カウンセリング内容（上司について・・・等は、フィクションです）
感想
いくつかの気づきがあったのでメモ書きしておきます。
① カウンセリングを受けるためにはユーザが「プロンプト（指示＝質問）」を工夫していく必要がある。ユーザ側のChatGPTへの経験値が相応に必要となる。
② ChatGPTの特性を理解し、うまくプロンプトを変えていくことで、相応にカウンセリングを受けている気持ちになれた。正しく指示していけば「成果」につながる可能性を感じる。
③ 60年代のイライザのユーザの感想（まるでカウンセリングを受けている気持ちになった）とどう違うか？今後の課題です。
＜注意＞
本稿は、60年代のイライザを再現する目的で、AIによるカウンセリングを試みたものであり、AIでカウンセリングが可能とか、それを推進すべきという意図はありません。
2023年5月4日 DIK金子